ガドリニウム造影剤は腎毒性はないが、投与によりanaphylactoid反応などのリスクにはなる.
・アレルギー様反応や他の副作用は 0.07-2.4%
・アレルギー様反応は稀であり, 0.004-0.007%程度.
・致命的な反応も非常に稀(0.001-0.01%)
腎疾患患者におけるGa造影剤の使用では, Nephrogenic Systemic Fibrosisが問題となる
・腎機能の低下した患者におけるガドリニウム造影剤の使用によりコラーゲンの沈着が全身に生じる病態.
・軟部組織, 皮膚, 筋, 心臓, 肝臓, 肺など.
・組織の線維化を伴う肥厚所見が認められる.
Nephrogenic systemic fibrosisはGa造影後2−3ヶ月以内に生じる.
・90%はGadodiamide(オムニスキャン®), 10%はDimeglumine(マグネビスト®)やGadoversetamide(Optimark)の使用歴がある.
・ほぼ全例が重度の腎不全で, 造影剤を使用することで生じている
・またNephrogenic systemic fibrosisはDose依存性
(The American Journal of Medicine (2015) 128, 943-949)
全てのGa造影剤で同じようなリスクとなるわけではなく薬剤によりリスクが異なる.
・リスクが低いGa造影剤をGroup IIとし, gadobenate dimeglumine, gadoteridol, gadoterate meglumine, gadobutrolが含まれる
Stage 4-5のCKD患者における, Nephrogenic Systemic Fibrosisのリスク因子を評価したMeta
(JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2019.5284 )
・Group II GBCA(Ga-based contrast agent)を使用し, アウトカムをNSFとした16 trials, N=4931例を評価.
・患者はeGFR<30mL/min/1.73m2を満たす患者で, 透析患者も含む
・Group II GBCAはgadobenate dimeglumine, gadobutol, gadoterate meglummine, gadoteridolが含まれる.
国内で使用されるのは
環状型: プロハンス®(gadoteridol), マグネスコープ®(gadoterate meglumine), ガドビスト®(gadobutol)
線状型: オムニスキャン®(gadodiamide), マグネビスト®(gadopentetate meglumine)であり, 環状型Ga造影剤を評価したMetaと言える.
アウトカム: MetaではStage 4-5のCKD患者におけるNSFは0例(0%)
・Follow-up期間は3-72ヶ月間
・Group II GBCAにおけるNSF発症率の上限は0.07%
薬剤別では
gadobenate dimeglumineが0.12%(0/3167)
gadobutrolが1.11%(0/330),
gadoterate meglumineが0.31%(0/1204),
gadoteridol 1.59%(0/230)
--------------------------
環状型のGa造影剤: プロハンス®(gadoteridol), マグネスコープ®(gadoterate meglumine), ガドビスト®(gadobutol)を使用する限りは, 腎障害があってもNSFのリスクは非常に低いと言える.
添付文章上は原則禁忌になっているため難しいものの, 臨床的にどうしても評価が必要であり, 有用性が上回るならば考慮してもよいと考えられる.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2019年12月11日水曜日
2019年12月10日火曜日
肝硬変に対するスタチン
スタチンは肝内循環に作用することで, 肝硬変症例において, 門脈圧を低下させる効果が期待できる.
・肝臓におけるNO産生や肝内皮細胞障害を改善させるらしい
肝硬変+門脈圧亢進(HVPG≥12mmHg)を認める59例を対象としたDB-RCT.
(Gastroenterology. 2009 May;136(5):1651-8.)
・除外: 妊婦, 胆汁鬱滞性肝障害, 重度の肝不全, Bil >5mg/dL, PT<40%, II-IV度の肝性脳症, Child-Pugh ≥12, Cr >1.5mg/dL, 肝細胞癌, 門脈血栓症, 門脈シャント形成後, 3ヶ月以内のスタチンの使用歴
・Simvastatin 20mg/d(15日後に40mgに増量) vs Placebo群に割り付け, 1ヶ月間継続.
母集団
・大半がChild-Pugh A-B
アウトカム: 使用前後のLab, HVPGなど
・門脈圧, 肝静脈圧, IGCすべてスタチン群で改善
肝硬変で門脈圧亢進を伴う患者(US, 上部消化管内視鏡において食道静脈瘤+, HVPG≥5mmHg[β遮断薬を使用している患者がいるため]) 34例を対象したTriple-blind RCT
(Dig Liver Dis. 2015 Nov;47(11):957-63.)
・除外: AST, ALT>3ULN, 6ヶ月以内のSimvastatin使用, 門脈血栓症, 造影剤アレルギー, 肝細胞癌, 予後不良な悪性腫瘍, Cr>1.5mg/dL, 出血素因(PT<30%, PLT <35000), 重度の腹水, II度以上の肝性脳症
・Simvastatin 40mg/d vs Placeboに割り付け, 3ヶ月間継続
・Primary outcomeはHVPG20%以上の低下, または<12mmHg(初期に>12mmHgであった症例)
母集団
・これもChild-Pugh A-Bがほとんど
アウトカム: Simvastatin群で有意にHVPGは低下
肝硬変で食道静脈瘤出血をきたした患者群を対象とし, Simvastatin vs Placeboで比較したDB-RCT.
(Gastroenterology. 2016 May;150(5):1160-1170.e3.)
・患者は通常の再出血予防治療(β遮断薬, Ligation)を施行予定.
出血から10日以内に割り付け.
・除外: 妊婦・授乳婦, 多発性肝細胞癌(単一の場合は>5cm), Cr>2mg/dL, Child-Pugh >13, スタチン禁忌, HIV, 門脈シャント作成後, 胃静脈瘤からの出血, 完全門脈血栓, Portal vein cavernomatosis, 以前に内視鏡的banding ligationとβ遮断薬を行なっている, 1ヶ月以内のスタチン使用歴
・Simvastatinは20mg/dで開始し, 15日後に40mg/dに増量
投薬は~24ヶ月継続
母集団
・Child-Pugh Bが多いが, Cもそれなりにいる
アウトカム
・Simvastatinは食道静脈瘤の再出血リスクを軽減させない
・腹水や門脈圧亢進に伴う合併症の軽減効果もない
・しかしながら死亡, 肝移植例は有意に低下する結果
-------------------------------
小規模のRCTがほとんどではあるが, 肝硬変に対するスタチン(simvastatin)は門脈圧を低下させ, 肝硬変の予後を改善させる可能性が示唆されている.
食道静脈瘤の再出血予防効果は認めない.
また, 肝硬変の予後を改善させるとされる抗菌薬, リファキシミンとの併用の場合は, Simvastatinの投与量は少なくすべきとの報告もある:
LIVERHOPE-SAFETY: 中等度以上の肝硬変(Child-Pugh B~C, ≤12pt)を対象としたDB-RCT.
・移植待ちの患者, Acute-on-Chronicの経過, Cr>2mg/dL, Bil>5g/dL, INR>2.5, CK>2ULN, 15日以内の消化管出血, 細菌感染症, 肝性脳症, HIV, 肝細胞癌, 6ヶ月以内のHCV治療, 筋症既往, CYP3A4阻害作用のある薬剤使用, 肝外腫瘍, 血液疾患, 妊婦・授乳婦は除外
・Simvastatin 40mg/d + Rifaximin 1200mg投与群
Simvastatin 20mg/d + Rifaximin 1200mg投与群
Placebo群に割り付け, 12wk継続. 副作用を比較した.
母集団
副作用:
・AST, ALT, CPKは有意にSimvastatin 40mg/d群で上昇する
・有意差を生じたため, 安全性を懸念してStudyは途中で終了
・肝臓におけるNO産生や肝内皮細胞障害を改善させるらしい
肝硬変+門脈圧亢進(HVPG≥12mmHg)を認める59例を対象としたDB-RCT.
(Gastroenterology. 2009 May;136(5):1651-8.)
・除外: 妊婦, 胆汁鬱滞性肝障害, 重度の肝不全, Bil >5mg/dL, PT<40%, II-IV度の肝性脳症, Child-Pugh ≥12, Cr >1.5mg/dL, 肝細胞癌, 門脈血栓症, 門脈シャント形成後, 3ヶ月以内のスタチンの使用歴
・Simvastatin 20mg/d(15日後に40mgに増量) vs Placebo群に割り付け, 1ヶ月間継続.
母集団
・大半がChild-Pugh A-B
アウトカム: 使用前後のLab, HVPGなど
・門脈圧, 肝静脈圧, IGCすべてスタチン群で改善
肝硬変で門脈圧亢進を伴う患者(US, 上部消化管内視鏡において食道静脈瘤+, HVPG≥5mmHg[β遮断薬を使用している患者がいるため]) 34例を対象したTriple-blind RCT
(Dig Liver Dis. 2015 Nov;47(11):957-63.)
・除外: AST, ALT>3ULN, 6ヶ月以内のSimvastatin使用, 門脈血栓症, 造影剤アレルギー, 肝細胞癌, 予後不良な悪性腫瘍, Cr>1.5mg/dL, 出血素因(PT<30%, PLT <35000), 重度の腹水, II度以上の肝性脳症
・Simvastatin 40mg/d vs Placeboに割り付け, 3ヶ月間継続
・Primary outcomeはHVPG20%以上の低下, または<12mmHg(初期に>12mmHgであった症例)
母集団
・これもChild-Pugh A-Bがほとんど
アウトカム: Simvastatin群で有意にHVPGは低下
肝硬変で食道静脈瘤出血をきたした患者群を対象とし, Simvastatin vs Placeboで比較したDB-RCT.
(Gastroenterology. 2016 May;150(5):1160-1170.e3.)
・患者は通常の再出血予防治療(β遮断薬, Ligation)を施行予定.
出血から10日以内に割り付け.
・除外: 妊婦・授乳婦, 多発性肝細胞癌(単一の場合は>5cm), Cr>2mg/dL, Child-Pugh >13, スタチン禁忌, HIV, 門脈シャント作成後, 胃静脈瘤からの出血, 完全門脈血栓, Portal vein cavernomatosis, 以前に内視鏡的banding ligationとβ遮断薬を行なっている, 1ヶ月以内のスタチン使用歴
・Simvastatinは20mg/dで開始し, 15日後に40mg/dに増量
投薬は~24ヶ月継続
母集団
・Child-Pugh Bが多いが, Cもそれなりにいる
アウトカム
・Simvastatinは食道静脈瘤の再出血リスクを軽減させない
・腹水や門脈圧亢進に伴う合併症の軽減効果もない
・しかしながら死亡, 肝移植例は有意に低下する結果
-------------------------------
小規模のRCTがほとんどではあるが, 肝硬変に対するスタチン(simvastatin)は門脈圧を低下させ, 肝硬変の予後を改善させる可能性が示唆されている.
食道静脈瘤の再出血予防効果は認めない.
また, 肝硬変の予後を改善させるとされる抗菌薬, リファキシミンとの併用の場合は, Simvastatinの投与量は少なくすべきとの報告もある:
LIVERHOPE-SAFETY: 中等度以上の肝硬変(Child-Pugh B~C, ≤12pt)を対象としたDB-RCT.
・移植待ちの患者, Acute-on-Chronicの経過, Cr>2mg/dL, Bil>5g/dL, INR>2.5, CK>2ULN, 15日以内の消化管出血, 細菌感染症, 肝性脳症, HIV, 肝細胞癌, 6ヶ月以内のHCV治療, 筋症既往, CYP3A4阻害作用のある薬剤使用, 肝外腫瘍, 血液疾患, 妊婦・授乳婦は除外
・Simvastatin 40mg/d + Rifaximin 1200mg投与群
Simvastatin 20mg/d + Rifaximin 1200mg投与群
Placebo群に割り付け, 12wk継続. 副作用を比較した.
母集団
副作用:
・AST, ALT, CPKは有意にSimvastatin 40mg/d群で上昇する
・有意差を生じたため, 安全性を懸念してStudyは途中で終了
2019年12月9日月曜日
胸膜癒着におけるタルク: 胸腔鏡下 vs チェストチューブ
JAMA. 2019 Dec 5. doi: 10.1001/jama.2019.19997. [Epub ahead of print]
Effect of Thoracoscopic Talc Poudrage vs Talc Slurry via Chest Tube on Pleurodesis Failure Rate Among Patients With Malignant Pleural Effusions: A Randomized Clinical Trial.
悪性胸水と診断された患者330例を対象としたopne-label RCT
・患者は組織, 細胞診より悪性胸水と診断された症例, 腫瘍があり, 他に説明が困難な胸水貯留症例, 画像検査より胸膜不整を認め, 悪性腫瘍が考慮される症例を対象
さらに局所麻酔により胸腔鏡検査が可能と判断され, 余命3ヶ月以上が予測される患者群を対象
・除外: <18歳, 診断のために胸腔鏡を行う予定の患者, 妊婦・授乳婦, 胸膜癒着が困難・不適応と予測される病態(Lung entrapment, fluid loculation), 胸水が少なく, 気胸誘発なく安全に胸腔鏡検査が不可能と判断される症例
これら患者群を胸腔鏡を用いたタルク散布群 vs ドレーンを用いたタルク懸濁液注入群に割り付け, 胸膜癒着の成功率を評価
・タルク散布群では局所麻酔を行い, 胸腔鏡を施行. 胸水を全てドレナージした後に滅菌粉末タルク4gを観察しつつ胸膜に均等に散布
その後16-24Frのチューブを挿入し, 終了.
・懸濁液注入群ではUSガイド下で12-14Frのチューブを挿入し, 18-24h後に胸部XPで評価. XPで拡張不良な肺や著明な残胸水を認めない患者において, 4gのタルク懸濁液を注入
・双方の患者で最低24hの胸腔ドレナージを継続
24h経過して, ドレナージ量が<250mL/dとなれば抜去する.
母集団
アウトカム
・両群で癒着失敗率は同等.
・180日で3割弱の失敗率となる.
・疼痛や合併症にも有意差は認めない
合併症
------------------------
以前のMeta(PLOS ONE 2014;9:e87060)では, 胸腔鏡下での散布の方が成功率は良好であった結果でした(RR 1.12[1.01-1.23])が, 今回のRCTでは両者で同等との結果.
Effect of Thoracoscopic Talc Poudrage vs Talc Slurry via Chest Tube on Pleurodesis Failure Rate Among Patients With Malignant Pleural Effusions: A Randomized Clinical Trial.
悪性胸水と診断された患者330例を対象としたopne-label RCT
・患者は組織, 細胞診より悪性胸水と診断された症例, 腫瘍があり, 他に説明が困難な胸水貯留症例, 画像検査より胸膜不整を認め, 悪性腫瘍が考慮される症例を対象
さらに局所麻酔により胸腔鏡検査が可能と判断され, 余命3ヶ月以上が予測される患者群を対象
・除外: <18歳, 診断のために胸腔鏡を行う予定の患者, 妊婦・授乳婦, 胸膜癒着が困難・不適応と予測される病態(Lung entrapment, fluid loculation), 胸水が少なく, 気胸誘発なく安全に胸腔鏡検査が不可能と判断される症例
これら患者群を胸腔鏡を用いたタルク散布群 vs ドレーンを用いたタルク懸濁液注入群に割り付け, 胸膜癒着の成功率を評価
・タルク散布群では局所麻酔を行い, 胸腔鏡を施行. 胸水を全てドレナージした後に滅菌粉末タルク4gを観察しつつ胸膜に均等に散布
その後16-24Frのチューブを挿入し, 終了.
・懸濁液注入群ではUSガイド下で12-14Frのチューブを挿入し, 18-24h後に胸部XPで評価. XPで拡張不良な肺や著明な残胸水を認めない患者において, 4gのタルク懸濁液を注入
・双方の患者で最低24hの胸腔ドレナージを継続
24h経過して, ドレナージ量が<250mL/dとなれば抜去する.
母集団
アウトカム
・両群で癒着失敗率は同等.
・180日で3割弱の失敗率となる.
・疼痛や合併症にも有意差は認めない
合併症
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以前のMeta(PLOS ONE 2014;9:e87060)では, 胸腔鏡下での散布の方が成功率は良好であった結果でした(RR 1.12[1.01-1.23])が, 今回のRCTでは両者で同等との結果.
2019年12月8日日曜日
てんかん重積初期治療におけるベンゾに続いての第二選択は?
(N Engl J Med 2019;381:2103-13.)
ESETT: ベンゾジアゼピンでも反応が乏しいてんかん重積患者を対象とし, Levetiracetam vs Fosphenytoin vs Valproate静注群に割り付け, 比較したDB-RCT
・患者は2歳以上で, 5分以上持続するベンゾジアゼピンで改善しない全般性痙攣を認める患者. 最後のベンゾジアゼピン投与5分以上経過しても痙攣を繰り返す群.
・ベンゾジアゼピンは最低でもジアゼパムならば10mg(0.3mg/kg), ロラゼパムならば4mg(0.1mg/kg), ミダゾラムは10mg(IM0.3mg/kg, IV0.2mg/kg)以上投与.
・心停止や外傷, 低血糖, 高血糖, 低酸素後の痙攣や妊婦は除外
薬剤投与量:
・Levetiracetam 60mg/kg, 最大4500mg
・Fosphenytoin 20mg phenytoin equivalents/mL, 最大1500mgPE
・Valproate 40mg/kg, 最大3000mg
・薬剤は10分間かけて投与.
投与後20分経過しても痙攣発作が消失しない場合, 再発する場合はレスキューとして他薬剤を併用する
アウトカムは投与後60分におけるてんかん消失, 意識状態の改善.
母集団
アウトカム: どの薬剤も同等の効果が期待できる.
・薬剤間で痙攣の消失, 意識障害の改善には有意差なし.
どの群でも50%程度の症例で改善が得られる.
Safety Analyses
・副作用はどれも同等であるが, 低血圧はFosphenytoinで多いかもしれない.
・60分以降12時間以内の痙攣再発は1割程度で認められた.
-------------------------
ベンゾで消失しないてんかん重積の第二選択ではフェニトイン、レベチラセタム(イーケプラ®), バルプロ酸静注どれも同等に効果的と言える.
ESETT: ベンゾジアゼピンでも反応が乏しいてんかん重積患者を対象とし, Levetiracetam vs Fosphenytoin vs Valproate静注群に割り付け, 比較したDB-RCT
・患者は2歳以上で, 5分以上持続するベンゾジアゼピンで改善しない全般性痙攣を認める患者. 最後のベンゾジアゼピン投与5分以上経過しても痙攣を繰り返す群.
・ベンゾジアゼピンは最低でもジアゼパムならば10mg(0.3mg/kg), ロラゼパムならば4mg(0.1mg/kg), ミダゾラムは10mg(IM0.3mg/kg, IV0.2mg/kg)以上投与.
・心停止や外傷, 低血糖, 高血糖, 低酸素後の痙攣や妊婦は除外
薬剤投与量:
・Levetiracetam 60mg/kg, 最大4500mg
・Fosphenytoin 20mg phenytoin equivalents/mL, 最大1500mgPE
・Valproate 40mg/kg, 最大3000mg
・薬剤は10分間かけて投与.
投与後20分経過しても痙攣発作が消失しない場合, 再発する場合はレスキューとして他薬剤を併用する
アウトカムは投与後60分におけるてんかん消失, 意識状態の改善.
母集団
アウトカム: どの薬剤も同等の効果が期待できる.
・薬剤間で痙攣の消失, 意識障害の改善には有意差なし.
どの群でも50%程度の症例で改善が得られる.
Safety Analyses
・副作用はどれも同等であるが, 低血圧はFosphenytoinで多いかもしれない.
・60分以降12時間以内の痙攣再発は1割程度で認められた.
-------------------------
ベンゾで消失しないてんかん重積の第二選択ではフェニトイン、レベチラセタム(イーケプラ®), バルプロ酸静注どれも同等に効果的と言える.
2019年12月3日火曜日
SGLT-2阻害薬には痛風予防効果がある
SGLT-2阻害薬ではUAの低下効果が示されている.
CANVAS trialのpost hoc analysis
(Lancet Rheumatol 2019; 1: e220–28)
・2型DM患者を対象とし, Canagliflozin 100mg, 300mg, Placebo群に割り付け, 比較したDB-RCT.
・この報告において, UAの変化と痛風発作頻度を評価した.
・患者は2型DMでeGFR>30mL/min/1.73m2を満たす群
・母集団における血清UAはおよそ5.9±1.6mg/dL
痛風既往がある患者は5%
痛風既往(+)患者群のUAは6.5~6.8mg/dL程度
アウトカム
(A: 痛風発作 + 痛風薬剤開始, B: 痛風発作, C: 痛風の薬剤開始, D: 高尿酸血症)
・CanagliflozinによりUAは0.39mg/dL(6.7%)低下
・痛風発作も有意に低下する(HR0.53[0.40-0.71])
----------------------------
SGLT-2阻害薬ではUAの低下効果, 痛風発作リスクの低下効果が期待できる.
高UA血症合併のDMや痛風発作を繰り返すDM患者では考慮するのも良いかもしれない.
CANVAS trialのpost hoc analysis
(Lancet Rheumatol 2019; 1: e220–28)
・2型DM患者を対象とし, Canagliflozin 100mg, 300mg, Placebo群に割り付け, 比較したDB-RCT.
・この報告において, UAの変化と痛風発作頻度を評価した.
・患者は2型DMでeGFR>30mL/min/1.73m2を満たす群
・母集団における血清UAはおよそ5.9±1.6mg/dL
痛風既往がある患者は5%
痛風既往(+)患者群のUAは6.5~6.8mg/dL程度
アウトカム
(A: 痛風発作 + 痛風薬剤開始, B: 痛風発作, C: 痛風の薬剤開始, D: 高尿酸血症)
・CanagliflozinによりUAは0.39mg/dL(6.7%)低下
・痛風発作も有意に低下する(HR0.53[0.40-0.71])
----------------------------
SGLT-2阻害薬ではUAの低下効果, 痛風発作リスクの低下効果が期待できる.
高UA血症合併のDMや痛風発作を繰り返すDM患者では考慮するのも良いかもしれない.
2019年12月2日月曜日
キノコ中毒 + シイタケ皮膚炎
キノコによる中毒症は自然毒中毒症で最も多い.
日本国内の平成元年〜22年に報告された自然毒の中毒症頻度
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
全国どこでもあり, 家庭内での中毒が多い
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
中毒キノコの種類と件数
キノコ中毒による死亡例
・ドクツルタケ, シロタマゴテングタケ, タマゴタケモドキ, タマゴテングタケの毒成分はアマニタトキシンであり, 死亡例の大部分はAmatoxinが関連している
------------
キノコ中毒にはどのような症状パターンがあるのか?
28018例のキノコ中毒症例より摂取~発症までの時間と症状から中毒症状パターンを分類
(Crit Care Med 2005; 33:427–436)
・全部で14パターンあることが判明
早期発症(<6h)で8タイプ
晩期発症(6-24h)で3タイプ
遅発(≥1d)で3タイプ
早期発症タイプ: 摂取後6時間以内に症状が出現(主に消化管症状)
晩期発症タイプ: 摂取後6-24時間で症状が出現するタイプ
・致死率の高いAmatoxinは晩期発症タイプにはいる
・オレラニンによる間質性腎炎や横紋筋融解症がはいる
(以下2019/12/2 Update)
これまでの分類でカバーできなかったキノコ中毒を大きくGroup 1-6に分類し,
鑑別アルゴリズムを作成した報告
(Toxicon 157 (2019) 53–65)
日本国内の平成元年〜22年に報告された自然毒の中毒症頻度
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
全国どこでもあり, 家庭内での中毒が多い
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
中毒キノコの種類と件数
キノコ中毒による死亡例
・ドクツルタケ, シロタマゴテングタケ, タマゴタケモドキ, タマゴテングタケの毒成分はアマニタトキシンであり, 死亡例の大部分はAmatoxinが関連している
------------
キノコ中毒にはどのような症状パターンがあるのか?
28018例のキノコ中毒症例より摂取~発症までの時間と症状から中毒症状パターンを分類
(Crit Care Med 2005; 33:427–436)
・全部で14パターンあることが判明
早期発症(<6h)で8タイプ
晩期発症(6-24h)で3タイプ
遅発(≥1d)で3タイプ
早期発症タイプ: 摂取後6時間以内に症状が出現(主に消化管症状)
症状タイプ
|
原因キノコ
|
||
神経障害
|
コリン作働性
|
ヤブシメジ(Clitocybe spp.)
アセタケ類(Inocybe spp.) |
ムスカリンを多く含み, 末梢のコリン症状を呈する. 中枢移行はない. 唾液や流涙, 排尿の増加, 下痢, 嘔吐, 縮瞳, 気管分泌物の増加を認める. 対症療法で数時間で改善.
|
グルタミン作働性
|
ベニテングダケ(Amanita muscaria)
テングダケ(Amanita pantherina) |
含まれるイボテン酸が中枢のグルタミン受容体を刺激し, 過敏や興奮, ミオクローヌス, 痙攣を生じる(小児で多い)
ムシモールはGABA受容体を刺激し. ふらつきや傾眠, せん妄, ジストニア, 幻覚を呈する(成人で多い) |
|
てんかん誘発性
|
シャグマアミガサタケ属(Gyromitra spp.)
|
摂取後4-6hで消化管症状と頭痛, 脱力を認める
神経症状では失調, 倦怠感, 眼振, 振戦, めまいがある. てんかん発作まで至るのは稀. 肝障害も認める |
|
幻覚誘発性
|
シビレタケ属(Psilocybe spp.)
|
サイロシビンによるLSD様の幻覚症状を呈する.
失調, 幻覚, 過活動 |
|
アレルギー性
|
免疫溶血性
|
ヒダハタケ(Paxillus involutus)
|
摂取後30分-3時間で消化管症状を呈し, その後免疫複合体による溶血, 腎障害を呈する.
|
肺臓炎
|
ホコリタケ(Lycoperdon spp.)
|
胞子の吸入によるアレルギー性の肺臓炎を呈する
摂取後早期に消化管症状. その後数日の経過で過敏性肺炎 |
|
消化管障害
|
ジスルフィラム反応
|
ヒトヨタケ(Coprinus atramentarius)
|
|
その他
|
消化管症状のみ
|
ヤマドリタケ(Boletus spp)
オオシロカラカサタケ(Chlorophyllum spp.) ハルシメジ(Entoloma spp.) |
晩期発症タイプ: 摂取後6-24時間で症状が出現するタイプ
症状タイプ
|
原因キノコ
|
||
肝障害
|
Amatoxin
|
テングタケ(Amanita)
ケコガサタケ属(Galerina spp.) キツネノカラカサ属(Lepiota spp.) |
Cyclopeptideによる中毒. Amatoxin, phallotoxin, virotoxinを含む
三相性の経過で, 摂取後6-24hで非特異的な消化管症状. 18-36hで一過性の改善を認め, 2-6日で急性肝不全を呈する.
キノコ毒で最も致死率が高い. 劇症肝炎となり肝移植を考慮することもある
|
腎障害
|
Amanita proxima
Amanita smithiana (テングタケ類) |
上記経過に腎不全も合併し, 透析を必要とする場合もある
肝障害よりも腎不全を主とする症例も報告されている |
|
四端紅痛症
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Clitocybe acromelalga
Clitocybe amoenolens (ヤブシメジ類) |
キノコ毒による四端紅痛症がある. 摂取後1日以降で出現し, 8日〜5ヶ月で徐々に改善
日本からもヤブシメジ摂取後3日で四端紅痛症を発症した報告あり(Clitocybe acromelalga) |
・四端紅痛症もキノコ毒でありえる
遅発タイプ: 摂取後1日以降で症状が出現するタイプ
症状タイプ
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原因キノコ
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腎障害
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オレラニン
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フウセンタケ
(Cortinarius spp.) |
オレラニンは尿細管間質性腎炎を誘発する
摂取後24-36h(平均3日)で消化管症状を呈する 数日〜数週経過(平均8.5日)して間質性腎炎を発症し, 晩期では間質の線維化を生じる 大半が腎機能は改善するが, 透析となる例もあり |
横紋筋融解症
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キシメジ(Tricholama equestre)
ニセクロハツ(Russula subnigricans) |
摂取後24-72hで横紋筋融解症や筋痛, 筋脱力を認める. 近位筋での障害が多い
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神経障害
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タマチョレイタケ
(Hapalopilus nidulans) |
摂取後24時間以上経過して視力障害, 傾眠, 脱力. 筋緊張の低下を認め, 血液検査では電解質異常や肝障害, 腎障害を認める
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香港におけるキノコ中毒の解析
2005-2015年に中毒センターに報告された中毒症例
(Hong Kong Med J 2016;22:124–30 )
・67例報告され, 60例(90%)は消化管症状, 嘔吐, 下痢, 腹痛
・このうち53例は摂取後6時間未満の早期発症で, 対症療法で改善
・7例は6時間以降での晩期発症タイプで, 重症の経過をたどった.
・重症経過ではAmatoxinが関連.
・晩期発症タイプの大半がAmatoxin関連
死亡や肝移植例, ICU症例も晩期発症で多い
香港におけるキノコ中毒症候群のタイプ
・コリン作用, 消化管症状タイプ, 幻覚タイプ, Amatxinタイプの4タイプが主な中毒パターンであった.
(以下2019/12/2 Update)
これまでの分類でカバーできなかったキノコ中毒を大きくGroup 1-6に分類し,
鑑別アルゴリズムを作成した報告
(Toxicon 157 (2019) 53–65)
・分類は大きく,
Group 1: 細胞毒性. 1-1 肝障害, 1-2 腎障害
Group 2: 神経毒性
Group 3: 筋障害
Group 4: 代謝/内分泌障害
Group 5: 消化管
Group 6: 他. シイタケ皮膚炎, 四端紅痛症様, ヒダハタケ症候群, 脳症
それぞれの症状と時間経過
これらの症状や経過からの鑑別アルゴリズム
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ついでに, シイタケ皮膚炎のReviewより
(Int J Dermatol. 2017 Jun;56(6):610-616.)
シイタケ(Lentinula edodes)の細胞壁を構成するPolysaccharideであるLentinanに対する皮膚反応.
生焼けのシイタケを摂取することで稀に生じる.
・Systematic review(n=50)によると, 平均年齢は44.6歳[25-86]
・線状の鞭で打たれたような皮膚炎(98%)が特徴的.
丘疹や蕁麻疹が80%, 掻痒感を伴うのが78%
他には点状出血(14%), 紫斑(2%), プラーク(6%)
焼けるような痛み(2%), Blanching(2%), 膿疱(2%).
・全身症状は発熱(6%), 下痢(4%), 手の感覚低下(2%), Urticarial dermographism (2%), 口腔内, 粘膜潰瘍(4%), 嚥下障害(2%), 結膜炎(2%)
・摂取~発症まで42.4時間(範囲2-120時間)
・皮膚生検は非特異的な所見となる
・治療なしで12.5日間[7-28]で自然に改善
外用ステロイドでは11.2日間[2-35日],
全身ステロイドでは9.3日[7-14]
Group 1: 細胞毒性. 1-1 肝障害, 1-2 腎障害
Group 2: 神経毒性
Group 3: 筋障害
Group 4: 代謝/内分泌障害
Group 5: 消化管
Group 6: 他. シイタケ皮膚炎, 四端紅痛症様, ヒダハタケ症候群, 脳症
それぞれの症状と時間経過
これらの症状や経過からの鑑別アルゴリズム
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ついでに, シイタケ皮膚炎のReviewより
(Int J Dermatol. 2017 Jun;56(6):610-616.)
シイタケ(Lentinula edodes)の細胞壁を構成するPolysaccharideであるLentinanに対する皮膚反応.
生焼けのシイタケを摂取することで稀に生じる.
・Systematic review(n=50)によると, 平均年齢は44.6歳[25-86]
・線状の鞭で打たれたような皮膚炎(98%)が特徴的.
丘疹や蕁麻疹が80%, 掻痒感を伴うのが78%
他には点状出血(14%), 紫斑(2%), プラーク(6%)
焼けるような痛み(2%), Blanching(2%), 膿疱(2%).
・全身症状は発熱(6%), 下痢(4%), 手の感覚低下(2%), Urticarial dermographism (2%), 口腔内, 粘膜潰瘍(4%), 嚥下障害(2%), 結膜炎(2%)
・摂取~発症まで42.4時間(範囲2-120時間)
・皮膚生検は非特異的な所見となる
・治療なしで12.5日間[7-28]で自然に改善
外用ステロイドでは11.2日間[2-35日],
全身ステロイドでは9.3日[7-14]
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