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2013年9月24日火曜日

結核性髄膜炎の診断Rule

Vietnam diagnostic ruleとClassification Treeについて.


Lancet 2002; 360: 1287–92
Vietnamにおける251例の髄膜炎症例の解析.
内143例がTBM, 108名が細菌性髄膜炎症例.
 上記を解析し, 有意差の出た項目をスコア化し, Vietnam ruleを作成. その後Prospectiveに42例のTBMと33例の細菌性髄膜炎症例でValidationを施行.

Vietnam rule

項目
Score
項目
Score
年齢
≥36
<36
 
2
0
CSF-WBC
>=900
<900

3
0
血中WBC
≥15000
<15000
 
4
0
CSF-Neu
>=75%
<75%

4
0
発症からの期間
>=6D
<6D

-5
0


 Validationにおいて感度86%, 特異度79%で結核性髄膜炎を示唆.
 Cutoffは<4ptで結核性髄膜炎を示唆.

Classification tree
 Validationにおいて感度88%, 特異度70%で結核性髄膜炎を示唆.
 48h後の評価では感度57%, 特異度76%で結核性髄膜炎を示唆するという結果.

このRuleのValidationを色々と見てみると,

TurkeyでのValidation Med Princ Pract 2005;14:151–154
 HIV陰性の髄膜炎患者126名のRetrospective study.
 103名が細菌性髄膜炎で, 23例がTB髄膜炎.
 Vietnam ruleの感度 95.6%, 特異度 70.8%

ThailandのValidation Am. J. Trop. Med. Hyg., 77(3), 2007, pp. 555–559
 HIV陰性の髄膜炎患者(CSF-glu低値)の205例のprospective study.
 Vietnam ruleとClassification treeの2つを用いて評価.
 TB髄膜炎 vs 細菌性髄膜炎の鑑別では,

感度
特異度
Vietnam rule
99%[93-100]
81.5%[73-88]
Classification tree
87%[78-93]
86.5%[79-92]

 
 TB髄膜炎 vs Non-TB髄膜炎の鑑別では,

感度
特異度
Vietnam rule
99%[93-100]
68%[59-75]
Classification tree
87%[78-93]
74%[66-81]
------------------------------------------------------------------------------

となかなか使える印象がある.

ただし, 上記StudyはHIV陰性患者を母集団としており,
HIV流行地域でのStudyを見てみると,

MalawiでのValidation (入院患者の70%でHIV陽性地域)
Tropical Medicine and International Health 2008;13:1042-1046

 TB髄膜炎 9例, 細菌性髄膜炎 64例, Cryptococcal髄膜炎 12例で調査.
 Vietnam ruleは, 感度78%, 特異度 43%のみ.
 Cryptococcal髄膜炎 12例すべてRuleを満たしてしまい,両者の鑑別ができない. また, 細菌性も半数で満たしてしまう.

HIV患者ではこのRuleは使用困難と考えるべきだが,
HIV陰性患者での結核性髄膜炎を考える際にはこのRuleは覚えておくべきであろう.

2013年9月21日土曜日

Complex regional pain syndrome (CRPS)について



Complex regional pain syndrome, CRPS
Reflex sympathetic dystrophy, RSD

2013年9月11日水曜日

強皮症による腸管蠕動障害に対するオクトレオチド


J Clin Rheumatol 2007;13: 119–123
腸管蠕動促進薬でも効果不十分な強皮症患者7名に対して, Octreotide 0.1mg SC 2回/d, もしくはLAR(long-acting-release) 20mg/moを投与し, 症状の変化を評価.
 ★国内にはサンドスタチンLAR筋注用 10-30mg製剤あり. (20mgで21.5万円で, 強皮症には適応無し...)

患者は間欠的腹痛, 悪心, 嘔吐, 腹部膨満感, 排便障害(>4回の下痢 or 2日に1回の便秘)を有する患者群.
症状をScore化し, 薬剤開始前後で比較.

 Scoreは, 腹痛, 悪心, 嘔吐, 腹満感, 排便障害の5項目を,
 0: 症状無し, 1: 軽度, 2: 中等度(日常生活は保たれる), 3: 重度(日常生活が障害)で評価. 0-15点で評価する.

アウトカム;
薬剤開始後の症状の変化.
どの患者も開始後1ヶ月で著明に症状は緩和されている.
効果は6ヶ月後も継続している.


1週間あたりの排便回数の変化
大体5回/wkに収束している印象.

強皮症の末期の患者さんでは腸管の障害がかなりネック。
食事も食べられず, 弱ってゆくパターンが多く, また有効な薬剤も無く苦慮する点ですが,
オクトレオチドは症状緩和に良い治療となる可能性がある. 今後のRCTに期待です。

現時点で試すかというと、、、試したいのは山々ですが、
なんといっても月20万円かかる点と、保険適応が無いのが非常に残念なところ。。。

新規ステロイド開始と感染症のリスク


Medicine 2013;92: 285-293
膠原病, 神経疾患で新規にステロイド開始された604名のCohort
日本国内の, National Hospital Organization所属病院で行われたCohort.
患者は4wk以内に膠原病, 神経疾患を診断された群で, ステロイドを開始した日からフォロー

 ● 膠原病は, SLE, MCTD, PM/DM, 血管炎, ベーチェット病, SSc, 成人Still病, Sjogren症候群, RA, autoimmune bullous disease, Anaphylactoid purpuraが含まれる.
 ● 神経疾患は, 重症筋無力症, CIDP, MS.
 ● 他, UC, 自己免疫性肝炎, 自己免疫性膵炎, PBC, 間質性肺炎, RPGN, 慢性糸球体腎炎, ネフローゼ症候群.

除外項目は, 状態不安定な心血管疾患, <16歳, <6mのステロイド使用歴, 他の膠原病の既往.

母集団; 
 INHは11.4%, ST合剤は22.8%で併用.
アウトカム; 全体で1105.8pt-y評価. (平均1.9年フォロー)
全体で434例の副作用あり. 最も多いのは感染症で227例.
多変量解析における, 感染症のリスク因子は
高齢者, 男性例, 間質性肺炎の合併, 高用量のステロイド(PSL≥29.9mg/d)が挙げられる.
死亡例が73例あり,
 その半数が感染症に伴うもの. 他には間質性肺炎が多い原因.
新規のステロイドを開始した患者群では,
1年以内の2割で感染症を発症し, その半数が細菌感染.
カリニ肺炎は0.7%/y, CMV感染は2%/y, 重症感染症は11.5%/yで起こりえる.

死亡原因の半数が感染症.

自分なんかはビビリなので、結構ST合剤併用することが多いですが、このStudyでは2割程度でした(PSL平均使用量50mg/d) 


2013年9月10日火曜日

運動後の筋逸脱酵素上昇の経過


Br J Clin Pharmacol 2007;65:253-9


15名の健康男性が1hrのWeightliftingを行い, AST, ALT, LDH, GGT, ALP, CKを評価したStudy
運動後7日間と, 10-12日目に評価.

*単位換算; 1µkat/L = 58.8 U/L


AST, LDHは運動後3-4dでピークであるが, ALTは4-6dでピークと, やや遅れる. 10-12dには正常化.
値は常にAST>ALTとなり, 最大で5倍に達する.
ALP, GGTは特に変化無し.

CPKは3-4dでピーク, Myoglobinは2-3dでピークとなる
運動後7dでも上昇していることがあり, 10-12dにはほぼ正常化している.

この辺の知識があると痙攣後のLabフォローの解釈に役に立ちそうですね。

2013年9月7日土曜日

2013年9月6日金曜日

T-cell/Histiocyte-Rich B-cell Lymphoma

参考; The Oncologist 2006;11:384–392

T/HRBCLはDLBCLの稀なVariantの1つ(1-3%).
組織的に腫瘍性B cellが<10%で, 大部分をT cell, Histiocyteが占める
 元々は “T cell-rich B cell lymphoma” と呼称されており, 皮膚に生じたリンパ腫において, 当初T cell lymphomaと誤診され, 少量の腫瘍性B cellが含まれていることが判明した経緯がある.
 Nodular lymphocyte-predominant Hodgkin’s lymphomaやHodgkin’s lymphomaでも同様の組織所見を示すため, 診断が難しいことがある.
 DLBCLよりも若年男性で多く, また, 肝臓, 脾臓, 骨髄浸潤が多い.
 経過はDLBCLと同じ様な経過を示し, 治療反応性も同じ.


T/HRBCLの好発年齢は40歳台. vs. DLBCLの好発年齢は60歳台
 男性が57-88%を多くを占める. DLBCLでは男女比は同等となる. T/HRBCLではより節外病変が多く, LDHが高値で, 進行したStageで発見される.
 臓器浸潤の頻度も高く, 脾臓浸潤は43-60%, 肝臓浸潤は33-40%の頻度, 骨髄浸潤は1/3で認められる.

Hodgkin’s lymphomaとの鑑別
 T/HRBCLと同様の組織所見をHLとNLPHLが来し得る.
 cHLはより若年で生じ, 平均年齢は20-30歳台だが, 50歳台にも小さなピークを認め, その年代ではmixed cellularity subtypeが多い. また, cHLは男性にやや多いが, lymphocyte-rich subtypeはより男性で多い.


cHL; classical HLとの鑑別点
 Hodgkin Reed-Sternberg(HRS) cellはT/HRBCLでも認められ, 小型のT-cellが優位に存在する像はlymphocyte-rich variant cHLの所見でもあるため, この2つの鑑別は難しい
 両者の鑑別にはImmunohistochemical analysisが有用. HRS細胞の大半はCD45, CD20, CD79a陰性で, CD15, CD30陽性. 一方で, T/HRBCLの腫瘍細胞はその正反対の性質を持つ.
 また, cHLの活性化細胞はT cellのみではなく, B cell, Eo, Neu, Plasma cellも含まれ, T/HRBCLではそれらの細胞は認められない点で異なる.

NLPHL; Nodular lymphocyte-predominant HLとの鑑別点;
 NLPHLはHLの5%程度と稀なtype. 組織像, Immunohistochemical analysisではT/HRBCLと鑑別が困難.
 NLPHLのL&H細胞は腫瘍性B cellとIHCが類似している.(CD45, CD20, CD79a陽性で, CD15, CD30が陰性)
 B cell trascription factor PU.1のみNLPHLで陽性と成り易く, 鑑別点となり得る
 NLPHLは名前の通り, 結節様の病変が主だが, T/HRBCLではびまん性の病変と成り易い点で異なる.
 
NLPHLとT/HRBCLの鑑別点は, 腫瘍細胞ではなく, Reactive cellの解析が重要.
 NLPHLではより多面的な免疫反応が生じ, 小型のpolyclonal B cellが他の炎症細胞と伴に増加し, CD57+ T cellのRosettesがL&H細胞の周囲に認められる.
 CD21+ follicular dendritic cellはNLPHLで残存し, T/HRBCLでは消失している.