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2012年8月24日金曜日

認知症と自律神経障害, 起立性低血圧

Diffuse Lewy Bodies(DLB) 20例と, 年齢をMatchさせたMultiple system atrophy(MSA) 20例, Parkinson病 20例において, 自律神経機能を評価. (Neurology 2004;62:1804-1809)
 糖尿病合併例は除外されており, 自律神経機能に影響を及ぼす薬剤は24時間前に中止を指示.
 自律神経の評価はTILT試験, 深呼吸時HR変化, Valsalva法, 発汗試験, CASS scoreなどで評価.

自律神経症状が最も高度な認知症は当然MSAだが, DLBも高頻度. PDは比較的自律神経障害は少ない傾向にある.
起立性低血圧はDLBの約半数に認められるが, PDでは少数のみ.

AD 39例, Vascular dementia(VAD) 30例, DLB 30例, PD 40例, 高齢者Control 38名で自律神経障害を評価. (J Neurol Neurosurg Psychiatry 2007;78:671-677)
 全認知症でHRの変動は低下し, 起立性低血圧を認め得るが, ADとVADは比較的軽症か低頻度. DLB, PDが多い傾向にある.
起立性低血圧の頻度はDLBで52%, PDで49%と高頻度.
ADやVADでは34%程度と少ないが, それでも1/3で認めると思えば多い方.
Control群では13%のみ.

最初のStudyではParkinson病における起立性低血圧頻度は低いとの結論だったが, 2つ目のStudyでは結構多い.
全体的な印象としてはMSA, DLBが最多で, 次いでPD ≥ VAD = ADくらいの頻度か?

血管性認知症において, 白質病変と起立性低血圧頻度には関連性があるとの報告もあり, 其々の認知症の重症度も関連性があるのであろう. (Acta Neurol Scand 1993;87:286-9)

補足; 自律神経障害を来す中枢病変
島回, 前帯状回, 視床下部, 脳幹の障害は自律神経障害を来す
 特に前帯状回は重要.
 内側前脳束, 背側縦束, 反屈束, 乳頭被蓋路が嘔吐中枢に関与.
 同部位のてんかん発作にて嘔吐を来すことが知られている.
 実際900例のてんかん発作のうち, 24例で嘔吐(+) ; Ictus emeticus. (Pediatr neurol 2004;31:283-86)
 側頭葉てんかんで, 前島回をフォーカスとするてんかん発作ではIctus emeticusを来すことがある. (Epilepsy and Behavior 2008;13:560-63)

 島回や前頭葉の脳梗塞で急性の尿閉がくる例もままありますよね。